子どもに死にたいと言われた時の話

もうすぐ二学期が始まります。
感染状況も一向に改善せず、漠然とした不安を抱える子も多いのではないでしょうか。

マスクによって意思疎通がうまくいかない、
友達同士での適切なスキンシップが良しとされない、など、
これまで以上に友達関係に安心感を持てない環境です。

これといった明確な理由がなくても、
「学校に行きたくない」「死にたい」と思う子もいて当然です。

以下の記事は、コロナ以前、且ついじめられの出来事ですが、
寄り添いの参考になればと思い、再度アップします。

「黄昏」的な関わり方も大事です

(以下、2021年3月20日投稿記事です)

3年生の2月。長男がお風呂に入っていると思ったら、裸になって冷たい水をお風呂に溜めて、冷たいシャワーを浴びていました。「これで死にたい」と言いました。

長男3年生の時の出来事

 この春、長男は6年生。4年の2学期に転入した学校では、素の自分、ちょっとマニアックな趣味も受け入れてくれるお友達や、得意なことを授業で発揮できるように場を与えてくださる先生に恵まれ、学校でも、家庭でも、穏やかでいる時間が増えました。

 そんな長男に私は、3年生の時のいじめられが原因で、「死にたい」と言われたことがありました。
ようやく、言語化しようと言う気持ちになれたので、同じ境遇にある人に届けばいいなと思い、ここに書いておきます。

 2年生の4月、東京から大阪の学校に転校しました。
 お友達関係では、転校生っぽい悩みを抱えていたものの、良い先生に恵まれ、少しずつ大阪の文化に親しむようになり、3年生に進級。
 年度途中で転校してきたお友達には、同じ境遇だからと優しく接していたそうです。

 ところが、下校後、非常にイライラしていたり、弟にきつい態度、高圧的な態度で接したりすることが増えました。
「学校で何かあったかな」と思うのですが、「どうしたの」と聞いても詳しいことは話してくれません。


 そのころは、マラソン大会の練習が朝も休み時間も実施されていました。長男は運動が苦手なので、練習が嫌なんじゃないかと見立てていました。休み時間に好きなことをして遊ぶことを許されず、ひたすら走るのはストレスフルだったと思います。


 そのうち、登校前になると必ずの「お腹痛い」。下痢でトイレから出られず、整腸剤を飲んで無理やり登校するようになりました。お腹が痛くならない時は、玄関にうずくまり、「学校に行きたくない」と言います。


 とってもありがちな親の心境ですが「このまま休んだら学校にいけなくなるんじゃないか」「これで休ませたら、サボり癖が着くんじゃないか」という思いにかられ、また、2歳下の弟の手前、具合は悪くないのに休む姿は見せたくない気持ちもありました。


 「とりあえず、いっておいで」「行けば楽しいことがあるかもよ」と無理矢理に登校させては、「(通学路の)途中でどこかにいってしまいませんように」と願う毎日でした。

ある日、お風呂で、
「学校で隣の席の子(女の子)にいじめられている」
「授業中に消ゴムを勝手に使われる」
「自分の机の中を勝手に触られる」
「授業中はしゃべっちゃいけないから、何かされても嫌だって言えないんだ」
「授業中に何か言ったら先生に怒られるから言えない」
「先生には言えない」
「先生の見てない時にされる」
と、ぽつりぽつりと話してくれました。

 聞いた私は、色々とショックでした。

「それくらいのことで?」「先生に言えないなんて」と思いました。

 長男が気にしすぎなのかもしれない。
 これで学校をお休みしたら、もう行くきっかけがなくなるかもしれない。
楽しく話せるお友達はいるようだし、
授業中だけ我慢すれば、やり過ごせるんじゃないだろうか。

 そう思い、「行きたくない」と言う思いは受け止めつつ、学校には行こうと説得しました。
受け止めたつもり、でしたが、受け止めてはいなかったんだろうと思います。

 私と夫からは、あなたを全力で守ること、必要があれば相手の子の親に直接話すこと、あなたに非はない、と伝えました。とはいえ、今思うと、心は裏腹だったかもしれません。

 朝トイレから出られない日は「お腹が痛いと言うので休みます」と渋々休ませていましたが、当の本人は今日学校を休むとわかるとお腹が痛いのはスッキリ治り、暇になるとゲームや動画。

 そんな長男にイライラするので、「休むなら動画もゲームもなし。部屋で寝てなさい!」ときつく言い放っていました。私のイライラと、休ませたことの罪悪感、親としての無力感をぶつけていたのだと思います。

 頑張って登校する日が続く中、長男は時折「もう死にたい」「生きてる価値ない」「死んだ方がマシだ」と言いました。

 ショックでした。そんなこと言ってほしくなかったんです。そんなこと思わないで生きていけるように、大切に大切に育ててきたつもりでした。

「そんなこと言わないで」「ほんとに死なれたら悲しい」と伝えました。

 励ましつつも、無理やりに登校させて、後ろ姿を見送りながら頭をよぎるのは「登校途中にマンションの屋上から小学生が飛び降りた」といった過去のニュース。

 毎朝、マンションの敷地を出るところまで見届けて、「生きて帰ってきますように」と祈っていました。

 それからは、子どもの自殺に関するたくさん文献を読みました。読みながらも、どこか「うちの子は違う」と思い込んでいました。
「言っているうちは大丈夫だろう」と。
 たくさん読んだ文献の中で、「死にたいと言っているうちは大丈夫。言わなくなってからが要注意」と書いてあったことが印象に残っていたのです。

 その先に起こったのが、冒頭の、冷水で「死にたい」、でした。


 大人からすれば冷水でなんて死なないのはわかりますが、
3年生の長男にとっては精一杯の方法だったのでしょう。
 でも、ついに、「死にたいと言っているだけ」ではなくなりました。

 これはまずい、深刻だ、と気づき、
担任の先生には「先生には言ってほしくないと言っていたのですが」とした上で、
長男の訴えを話し、
学校に行くのを嫌がっていること、
帰宅後とても荒れていることを伝え、
「子どもの言うことなので、実際のところはどうなのでしょうか」と事実確認をしました。

 先生は丁寧に話を聞いてくださり、「様子を見てみます」とのことでした。

 同じ頃、学校に行けなかった日に、ポコアポコヌリエールを使ってお話を聞きました。
 その時の出来事はこちらに詳しく書いています。

 どれだけ学校が辛い場所であるか、手にとるようにわかりました。
こんなふうに思わせることが、あったんだ、と思うようになりました。

 長男に、嫌なことをしてくる子と今後どう言う関係になりたいのかを聞きました。
 和解は求めていない、
仲良くなりたいわけではない、
ただ本当に関わってくるのをやめてほしい、
とのことでした。
私は、無理に仲良くなる必要はないと伝えました。

 長男と相談して、
「1週間のうち全部休むと、なんで休んだのとか聞かれるから、それも嫌だ。
だから、もし1日休んだら2日は頑張る。休んでパワー溜めて、学校行く。」と言うことにしました。
 そう決めてからは、私はゆったりとした気持ちで長男を休ませることができました。
学校にいけなくなるんじゃないかと言う不安から
解放されました。
 長男と夫も、よく話し合ってくれました。
私に話す内容、父親に話す内容を、
長男なりに分けていたようです。

 学校では、担任の先生がクラス全体に対して
「お友達の物を、勝手にとったり触ったりしてはいけない」と言うお話をしてくださいました。
長男は、そう先生が言ってくださったことがとても嬉しかったようです。
『ママ!奇跡が起きた!先生がみんなに話してくれたんだよ!
絶対アイツ(長男にとって嫌なことをしていた子)のことだよ。」と、
興奮気味に話してくれました。


 後日、先生はお電話で
「本人(長男にとって嫌なことをしていた子)に響いているかはわかりませんが。。。」と話されていましたが、「○○君(長男)から打ち明けてくれるまで見守っています」と言ってくださいました。
先生には知られたくない、
相手のお友達との和解は望んでいない、
と言う長男の意向を尊重してくださった対応に、
私は感謝の気持ちでいっぱいでした。

 まだ登校前の「お腹痛い」は続いていました。
「死にたい」もたまに言います。

 「死にたい」「もう死ぬ」と言われた時は
「そう思わずにはいられないことがあったんだね」
「辛かったね」「何があったの?」と声をかけるようになりました。
 長男の、「死にたい」と思うことを否定するのを、やめました。
 少しずつ、その日に嫌だったことを話してくれるようになりました。

 4年生に進級するときのクラス替えで、
そのお友達とはクラスが離れ、
またそれなりに学校を楽しめるようになりました。

親の仕事の都合で2学期には東京へ戻ることになった時は、
とても残念がっていましたが、転校先の学校では、
登校初日に黄色いTシャツを着て行き、
思いっきり素の自分を出して帰ってきました。

 素の自分の、良いところもマニアックなところも
『こわい』『きもい』と言わずに受け止めてくれるお友達がたくさんいることが、
長男の学校生活を支えてくれているとのこと。

 大阪でのこの出来事、
相手の子の名前も今はすっかり覚えてない、と言います。
そうやって乗り越えたんだろうと思います。

 今の学校でも、楽しいことばっかり、ではないようですが、
長男なりに乗り越え、踏ん張り、かわしているようです。

 私は、この一連の出来事を通して、
思っていい感情、思っちゃいけない感情、なんてない、と、
心の底から思い、子どものどんな感情も受け入れられるようになりました。
(もちろん、イライラ行動、許せない行いはあります。
でも、思うことを否定はしないように意識しています。)

 そして、どんなことを思っていても、
私はあなたの味方だ、
絶対に守る、と伝えるようにしています。

最近、長男が「うちの親子関係は良好だよね。
学校のこととか気軽に言えるし。」と、何気ない会話の中で言いました。

私たち夫婦の子育てにマルをもらったような気がして、
本当に嬉しい言葉でした。

 これからも、良いこと、困ること、たくさんあるでしょうが、
その度に、自分が必要とする誰かの力を借りながら、
乗り越えていって欲しい。
そのために、誰かに相談すること、信じることを、
親として伝え続けていこうと思います。