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その一瞬を切り取って善悪を判断していませんか?
うちの子が1年生の時のお話。
下校の時間、息子はお友達の背負ったランドセルを覗き込んでいたところを、その一瞬に通りかかった担任の先生に「お友達のランドセルのぞいちゃダメでしょ」と叱られたのだそうです。
実際にどのような言葉、語気だったかはわかりませんが、息子にはショッキングな出来事でした。
というのも、こんな経緯があったのだそうです。
下校前、もうランドセルを背負った状態のお友達が、
「ランドセルから傘出して」っていったんですって。
それで、息子はお友達のランドセルを開けて、覗き込んでいた。←先生ここ
先生からしたら、息子がお友達のランドセルの中を勝手にのぞいているように見えたのでしょう。
もしくは、以前に別のお友達同士で似たようなことがあり、トラブルになったとか。
理由は分かりませんが、先生にとっては好意的な場面ではなかったようです。
行動には必ず理由がある
幼稚園でも保育園でも、
走っては行けないお部屋で走り回っている子、
なぜかお友達の席に座って頑なに動かない子、
手を洗うのを嫌がる子、など、
パッと目についた状況から「できていない」「悪いことをしている」という判断で叱られる子が少なからずいます。
丁寧にその子に関わる余裕が先生にないときは、とりあえず「お部屋は歩いて!」と声をかけて、ひとまず安全を確保する、ということもします。大抵の先生は、後でフォローします。
ところで、なんで彼らはこういうことをしていると思いますか?
私が学んだカウンセリング論では、「行動には必ず理由がある」と教わりました。
行動の裏には、そうしないといられなかった何かがある、という考え方です。
例えば、私が実際に子どもから聞いた理由はこうでした。
①お部屋で走り回っているのは、遊びたいおもちゃを取られたくなかったから。
こういう理由で走り回っている子に「危ないから歩いて!」って言っても、多分止まりません。
だって、おもちゃを取られちゃうんです!その子は必死です。おもちゃを取られるなんて、死活問題!
それなのに、先生は「走っちゃだめ」って。
この子は、どうしたら良いんでしょう。
あなただったら、なんて声をかけますか?
②さっきまでこの席はお絵描きができる席だったから、私もこの席でお絵描きしたかった。
この子は、2歳の女の子。
お片付けをして集まる時間になったのに、女の子がお友達の席に座って離れません。お友達は座れなくて困り顔。
実はその席、好きな遊びの時間は、「お絵かきのテーブル」になっていました。
それを見ていたのでしょう。もしかしたら、席が空くのを待っていたのかもしれません。
先生は、困っているお友達の気持ちを汲んで、席を立つように促しました。自然な判断です。
でも、女の子は納得できていない様子でした。
「お絵描きしたかったんだね。でももうお絵描き終わっちゃった。またお絵描きでるように先生にお願いしておこうね」と伝えると、女の子はスッと席から離れて集まりの輪に加わりました。
③手を洗いたくないのは、冷たいお水が嫌だったから
3歳の女の子。
真冬、お散歩から帰って、手洗いの時間です。他のお友達はスムーズに手洗い、着替え、と進んでいますが、「手、洗わない!」といつまでもお部屋の隅っこにくっついていました。
周りの先生は、一生懸命に声かけをし、誘います。
「早く手を洗って、一緒にお着替えしよう」「着替えたらお昼だよ〜」「先生と、どっちが早いかな〜?」
でも、手を洗うのが嫌なんじゃなくて、冷たい水なのが嫌なんです。
それを聞いて、私はその子の手をとって、私の手の温度を伝えながら一緒に洗ったり、「3秒だけ我慢して洗っちゃおう!」と誘ったりして、手洗いを一緒にがんばりました。
余裕があったら聞いてみてほしい
子どもの「○○できない」「したくない」って、大人には想像もつかないような理由であることがよくあります。
私も、息子が耳鼻科でもらう点鼻薬をしたがらずに困っていた時、耳鼻科の先生が丁寧に聞き取りをしてくださいました。
耳鼻科の先生:「嫌なんだ、何がいや?難しい?」
息子:「シュッって(薬が)出た時に吸い込むのが難しい」
耳鼻科の先生:「それね、吸い込まなくていいよ、それならできそう?」
息子:「うん!」
そばで聞いていて驚きました。
まさかそこに引っ掛かりがあるなんて思いもしなかったんです。(もう4年生。これまで何度も処方されていた点鼻薬なのです)
我が子のことになると、丁寧さにかけてしまいますね。第三者の存在は、本当にありがたいです。
理由を話してくれない時
「なんで走ってたの?」と
「なんで走ってたの?!」
理由を話しても怒られなさそうなのは、どっちだと思いますか?
最初から怒ってそうな人に、何を話しても怒られるなら、言いたくなくなります。
「何か困っていたのかな」「走らなきゃ行けない理由は何だったの?」
そう聞くと、大人にもわかるように話してくれる子はいます。
「楽しくなっちゃった」「○○ちゃんが追いかけてくる」「○○ちゃんが、話しかけてるのに聴いてくれない」「僕は戦いごっこしてないのに、急にバンバン!ってしてきて嫌だった」など、いろんな理由があります。
まとめ
そうせずにはいられなかった理由を丁寧に聴いてもらえる。
それは、聴いてくれた人との信頼関係の基礎になります。感情を受け止めてもらえることは、自己肯定感の大切な要素です。
ランドセルの件で叱った先生、他にも色々息子とそりが合わなかったようで、息子はその先生を今でも「ひどかった」と言います。(なかなかにトラブルの多いクラスだったと聴いているので、先生も、子どもには分からないご苦労があったのでしょう。)同業者として悲しい。
同じような行動をしているように見えても、理由は毎回違うかもしれません。
「何であの人、いつもああなんだろう」
相手が大人でも、その理由を、解決方法を、一緒に考えていくことで、いい方向に進むかもしれません。
ちょっと説教くさい感じもありますが、何かの気づきにつながれば、幸いです。